東日本大震災から3年。そして、日本の侍、岩田?一さんの志
2011年3月11日。東北地方三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が襲った。その揺れに伴って起こった大津波は、約10メートルの巨大な壁となり岩手県、宮城県、福島県の沿岸部を中心に、北海道太平洋沿岸から関東の沿岸へと押し寄せ、一帯に壊滅的な被害を与えた。報告されているだけでも、死者15,844人、行方不明者2,636人、宮城県と福島県を中心に561k が津波により冠水、建物の全壊、半壊は合わせて39万9284戸に上る。さらに、大津波に襲われた福島第一原子力発電所は原子炉の冷却機能が破壊され、今世紀最悪の原子力災害の発生を招いた。全てが一瞬にして変わり果てた。
被災地の今
あれから3年。被災地では今日もさまざまな復興活動が行われている。津波で壊滅的な被害を受けた地域も瓦礫処理はほぼ完了し、各地でインフラ整備や高台の着工準備が進められている。しかし、未だに震災、そして原発事故の影響は深刻な影を落とし続けている。防波堤や公共住宅施設、農地復旧など、被災地が本来の社会的機能を果たせるようになるまでにはまだまだ道のりは長く、原発事故により警戒区域及び計画的避難区域に指定された地域の住民は自分の土地に立ち入ることが制限されている。風評被害も後を絶たない。長引く避難生活や転居を余儀なくされている被災者は2014年1月現在も27万人を超え、体調の悪化や自殺などによる震災関連死は3,000人近くにも上る。しかし、これら被害報告され数字に表れるものは、一部にしか過ぎず、東日本大震災の傷跡は私たちが思う以上に深いのではないだろうか。
アデレードにやってきた日本の侍
被災地に希望の光を届けようと、 オーストラリア大陸を横断中の岩田 一さん。袴姿でパースからシドニーまで単独で歩きながら、被災地のための義援金を募っている。そんな勇気ある行動の始まりは、被災地を訪れた際に目にした、崩れた小学校の光景だったという。もともと教育現場の仕事に興味を持っていた岩田さんは「これまで経験したことのないような大きな衝撃を受けて自然に涙が出てきました。でも同時に『東北のために何かする』と決心しました」。そして、その後気分を落ち着かせようとたまたま立ち寄ったコンビニエンス ストアで買ったフォーチュン クッキーから出てきた言葉、"覚悟はいいか、俺は出来ている"は、まるで自分の気持ちを確かめるかのようで、さらに意思が固まったという。こうして、岩田さんの中に芽生えた「猶興(ゆうこう)の志」、つまり誰かがやってくれるのを待つのではなく自ら考え行動を起こすという意思は、岩田さんに6年間務めた仕事を辞めさせ、考えを実行に移させた。
学生時代は陸上部に所属し、神戸の三宮から京都まで1日で歩くなど、体力には自信があるという岩田さんならではのできること、それが歩きながら被災地の子どもたちの教育を支援する資金を集めることだった。また、歩きながら被災地のことを伝えることで、「震災を過去の出来事にするのではなく、現在も被災地で苦しんでいる人々がたくさんいることを知ってほしい。できれば日本人だけではなく、海外の人にも知ってほしい」と考えた。岩田さんは今回、自身が尊敬する坂本龍馬を意識した袴姿で歩いているが、それは少しでも海外の人に自分の活動に対して興味を持ってほしい気持ちの表われだという。
異国の地としてオーストラリアを選んだのは、小学生のときにブリスベンに滞在経験がありオーストラリアを身近に感じていたことと、大陸横断に関する情報が比較的入手しやすかったからだという。そして、全長4,200kmにおよぶ岩田さんのチャリティーウォークは2013年9月15日パースで幕を開けた。
約3ヶ月をかけて、12月にアデレードに到着。途中、リヤカーのホイールが壊れてしまうなど、決して平坦な道ではなかった。だが、長い道のりの中、オーストラリアののどかな雰囲気、大自然、人々の笑顔に触れ、組織や教育観念に縛られない、足るを知る純粋な生き方を知ったという岩田さん。それと同時に、外から日本を見ることで、日本社会や和の文化について新たな見方を発見できたともいう。「世の中を自分の力で変えようとするのであれば、自分自身、海外でもっと活動機会を増やして色々な経験と知識を増やす必要があることを実感しましたが、同時に教育に関わるNPOを設立したいという夢も明確に見えてきました」
ゴールとなるシドニーに向けて現在アデレードで準備中の岩田さん。目標は自分の行動で東北を元気にすることだが、「アデレードに暮らす人にも機会があれば、実際に被災地に足を運んで自分の目で見てほしい。猶興の志を持ってほしい。生きるということについて考えさせられると思います」と語る。岩田さんはアデレードを発つ4月まで、イベントなどを通じてアデレードの人にも被災地のことをもっと知ってもらうことを計画中だ。この機会に、岩田さんの活動、そして東北の復興支援に再度目を向けてみてはいかがだろう。
岩田さんの活動「BEYOND WALK」: http://beyondwalk.com/
寄付、活動サポート費に関して:http://beyondwalk.com/blog/support
西オーストラリアの路上で偶然出会った岩田さんとTony Dunkleyさん。
Zimmers Apprenticesというバンドで活動するTony Dunkleyさんが岩田さんにインスパイアされ、岩田さんに捧げるために作った曲"Home"のダウンロードはこちらから。
http://zimmersapprentices.com/home_for_yuuichi
AJAからのお知らせ
3月11日 6:15pmよりカフェ・アモーレ(中二階)にて東日本大震災3周年にちなんだ集会を行います。ゲストスピーカーとして岩田さんにもお話しいただきます。詳細は下記をご参照ください。
http://www.ajaofsa.asn.au/
Tuesday, March 11, will be the 3rd anniversary of the Tohoku tsunami and nuclear disaster, and while the world has passed on to newer tragedies, the situation for many people in Japan is still terrible. The AJA of SA Committee is organising an occasion to remember those who were lost and to offer support, in some small way, to those for whom survival has been difficult. Our plan is to hold a special meeting on the mezzanine level of the Caffé Amore at 6.15pm for this purpose. Yuuichi Iwata, who is walking from Perth to Sydney to raise money to rebuild the schools and give educational support for the children in the disaster region, will speak on his motivation and experiences so far. Others will speak briefly and there will be some Japanese music and nibbles afterwards provided for participants. Our intentions are to maintain awareness of the ongoing disaster and to raise money for schools in the affected areas by donations and a raffle on the night. There will be more details soon, but we encourage you to attend, to give donations even if you cannot be there, to let others know about this event, and perhaps provide a good prize to support the raffle. Please contact Jim at jlstewart@optusnet.com.au with any questions.
編集:2014年2月