「やるしかない!」勉強とテニスを両立させた留学生活 平山香純さん(Kasumi Hirayama)
2022 年 1 月からアデレードの公立高校 Marryatville High School に卒業留学中の平山さん。勉強とテニスを両立させた 3 年間の卒業留学プログラムも終わりに近づいているが、最後まで全力で留学生活を楽しんでいる。
コロナ禍を転機に
幼い頃から英語が好きで海外にも興味があったという平山さん。小学校 1 年生で始めたテニスは、4 年生になる頃には本格的に打ち込むようになり、ITF(International Tennis Federation/国際テニス連盟)主催のツアーへの出場資格が得られる 13 歳になったらテニスで世界を駆け回る計画だった。しかし、13 歳になった 2020 年 2 月にちょうどコロナが猛威を振るい始めたため残念ながらその計画を実行に移すことを断念。日本の中高一貫校でのこれまでの日常を繰り返す生活となった。日本での中学校生活は楽しかったものの、特にテニスが強いという学校でもなかったためテニスで高いレベルを目指していくことはできなかったという。
コロナ禍の先が見通せない状況の中、高校進学について家族で話しているうちに見えてきた方向性は「高校からの海外留学」というものだった。平山さんは元々「大学はテニスでアメリカに」という気持ちがあったが、「どうせなら高校から海外留学を始めてしまおう」という前向きな発想で、日本の中学校の卒業式を待たずに高校卒業留学に踏み出すことにした。
留学先は安全面を考慮して、また日本の中高一貫校ではオーストラリアの姉妹校と交流がありオーストラリアを身近に感じていたことからオーストラリアに絞られた。また、オーストラリアのテニスクラブについて調べている中、アデレードに日本人高校生も受け入れる良いテニスクラブがあることが分かりアデレードに決まった。そしてアデレードの高校は、テニスプログラムがありテニスに定評があるマリアットビルハイスクールとなった。
勉強とテニスの留学生活
「渡航前に英語の準備をしておこうと思っていましたが、中学校の勉強やテニスに忙しくてあまりできませんでした」と話す平山さんだが、余裕を持って現地校が始まる 1 週間に現地に到着してホームステイ生活を始めたことで、学校が始まる前に少しずつ英語に慣れることができたという。マリアットビルハイスクールでは ISEC (Intensive Secondary English Course / 留学生向けの英語集中コース)からの始まりとなったが、当時はコロナ禍が明けてまだ間もなかったこともあり留学生の数も少なく、ISEC クラスにいる留学生の出身国も程よくバラツキがあり、みんな自然に打ち解けて仲良くなった。そのため平山さんは英語面でも特に気後れすることもなく、勉強面でも問題はなく順調に留学生活に慣れ、3 ターム目から Year 10 のメインストリーム(現地校の通常のクラス)に編入した。「ISEC 経由でなかったら大変だったと思いますが、ISEC でしっかり半年頑張ったのでメインストリームにも順調に入ることができました」
マリアットビルハイスクールが授業の一環として提供するテニスプログラムに入るには、留学生は渡航前に各種書類の他、自分のプレーを映したビデオを学校に提出して審査をパスする必要があるが、平山さんはそれを問題なくクリアしていた。テニスプログラムの活動は 1 週間あたりダブルレッスン(2 時間分の授業が一括りになったクラス)が 2 回、シングルレッスンが 1 回あり、夏の時期は土曜日の前中に試合が行われるが、平山さんは入学してすぐ、ISEC の時からテニスプログラムをスタートさせた。そのため、ISEC クラス以外にもテニスを通じて現地の友達がたくさんでき、さらに学校以外でもテニスを通じて友達を作ることができたという。
Year 11 になると勉強の方はいよいよ大変になり始め、Year 12 になり卒業も迫ってくる今では出される課題はさらに大変になっているが、平山さんはとにかく各教科から出される課題の提出は頑張っているという。そして、放課後はほぼ毎日 16:30 から 19:00 まで、土曜日も南オーストラリア州のリーグ戦のためにシティにあるテニスクラブの活動や ITF ツアーの海外遠征などとの両立をきちんと果たしている。テニスでは、4 月にトルコで開催された ITF ジュニアの大会でトルコの選手とペアを組み、ダブルスで見事初めての優勝を果たしている。
「成績は自分ではまあまあ頑張っているかなと思います。"ギリギリセーフ"くらいです」という平山さんだが、両立させるコツを聞いてみるとキッパリとこう答えてくれた。「テストとかは億劫に感じることもありますが、課題は出さなくてはいけないものだと思っています。やりたい、やりたくないではなく、『やるしかない』です」
どこにでも住めるし、何でもできる
平山さんはここまでの留学生活を、「英語に自信が持てるようになったことや色々な国の文化を知ることができてとても良かったです」と一言で振り返る。また、マリアットビルハイスクールはテニスが強く、全国大会など友達と遠征に行くこともできたので、この学校で良かった、とも話してくれた。特に去年ブリスベンでの全国大会では、メンバーに怪我人も出てベストな状態ではなかったものの準優勝し、みんなで喜びを分かち合えたことがとても嬉しく良い思い出になったという。
卒業後はアメリカの大学にテニスのスカラシップで進学することを目指しているが、その後のことは特に明確に考えているわけではなく白紙の状態という。一方で、平山さんは、「留学して英語もできるようになって視野も広がったと思うので、将来はどこにでも住めるし、何でもできるように思います。日本も良い国だと思います。テニスでプロになるのは現実的には厳しいかもしれないけど、それもどうなっていくか分からないです」とポジティブに自然体でこれからも歩んでいく姿勢だ。
最後に平山さんがこれから高校留学する方へのメッセージを送ってくれた。
「大丈夫かな? 不安だな、という気持ちもあると思いますが、英語を話せなくても何とかなるから大丈夫です。留学に行きたいなという気持ちがあればやってチャレンジしてみた方がいいと思います。チャレンジしてみて後悔することもあまりないと思います。あと、最初は一人で寂しいかもしれないですが、周りに支えてくれる人が必ずいるので安心して来て欲しいです。私も周りの人たちに支えられていることを実感しています!」
アデレードでの高校留学を通じてテニスも勉強も自分のベストを尽くした平山さんは、また次のステージで新たなチャレンジを楽しんでいく。
留学先
マリアットビルハイスクール (Marryatville High School)
170 Kensington Road, Marryatville SA 5068
Website: marryatvillehs.sa.edu.au
取材:2024 年5月