アデレードで頑張る人を応援

田中 みつき(保育士 / Child Care Worker)

キラキラしながら生きていこう

保育士 / Child Care Worker
田中 みつき(たなか みつき)

保育園児の時からの夢を叶えて保育士になった田中さん。日本やニュージーランドでの経験を活かして、アデレードで次の夢に向かって歩んでいる。

テファリキに惹かれて

日本の大学卒業後、念願の保育士になって3年間日本で働いた田中さんだが、充実した日々の中で興味を持ったのはニュージーランドの保育方針"テファリキ"だった。テファリキとは、マオリ語で"縦横に織り込まれた敷物"を意味する言葉。子どもの社会的・文化的な学びや、さまざまな人々との関わりを重視した方針で、多様な背景を持つ子どもたち誰もが乗ることのできる敷物を象徴している。
ニュージーランドでテファリキを体験することを決心したものの、当時英語が得意でなかった田中さんが最初に向かったのはフィリピンだった。フィリピンで短期間に集中的に英語力を高め、1ヵ月ほど保育園でのボランティアも行った後、いよいよ田中さんはニュージーランドに降り立った。

ここで働きたい、と日本にいる時から考えていた保育園を始め、「とにかくCVを配り歩きました」という田中さんだが、英語面がネックとなり仕事に就くのに時間がかかったという。それでも田中さんは粘り強く頑張り、働きたかった保育園には5回アプローチしてようやくリリーフとして採用されたのだった。その後は他の保育園とも契約していくつかの保育園を掛け持ちしながら忙しい日々を送り、ニュージーランドでの生活もあっという間に2年が過ぎていった。田中さんは、自ら飛び込んで体感したニュージーランドの保育システムはとても勉強になり好きになったが、経済的な面や日本の保育資格の切り替えに必要な条件面などから、ニュージーランドでの生活を終わらせて、次の機会を求めて旅たつことにした。行き先はオーストラリアのアデレードだった。

アデレードで起業

2020年3月、COVID-19の感染急拡大によってオーストラリアの国境が閉鎖される直前にオーストラリアに滑り込んだ田中さんは、アデレードで語学学校に通ったり、好きな絵を描きながらゆっくりと新天地での生活をスタートさせた。
夢が動き出したのは、その後保育園でのフルタイムでの仕事が決まり、1年半ほど働いてからだった。
「ファミリーデイケアを始めたい」
これまで温めていた気持ちが熟すようにそう思い始めた田中さんは、保育施設の認可に携わるコーディネーターに相談を持ちかけた。しかしアドバイスされたのは、英語力をさらに高めることと、日本語だけで保育を行うことは認められないということだった。
田中さんは、とりあえずは保育士派遣を行うエージェントに登録して、派遣ベースでいくつかの保育園を掛け持ちして働きながら、2ヵ月後にまたコーディネータのところに相談に戻った。そこで改めて自分のことや自分が考えている保育施設の計画をアピールした結果、ファミリーデイケア施設としての認可のための審査を進めてもらえることになった。審査にはこの先まだ時間がかかる見込みだが、田中さんは前向きに引き続き準備を進めていくつもりだ。
「派遣で行く保育園それぞれで異なる方針ややり方、ルーティーンなどがあるので、自分のこれからにとってとても勉強になっています」
田中さんは、ファミリーデイケア施設の認可が得られるまでの間は、保護者と直接契約を結ぶ形でベビーシッターの委託を承る施設として"きらきらホーム~育ちのおうち~"を開設することにした。
きらきらホームでは、日本人の子どもや日本の文化や言葉に興味を持つ家庭の子どもに、基本的には日本語を使用してベビーシッターを行っていくという。

"きらきら"の名前には由来がある。
大学の親友がくれた手紙に書かれていた詩だ。

好きなことをするから
ひとは キラキラする
心のまま 想いのまま
生きようとするから
ひとは キラキラする
好きなことをして
キラキラ こころ 輝く人生を

子どもも保護者も保育士も、そして私もキラキラしながら生きていこう。
田中さんは、この詩をもらった時から、将来自分で作る保育園の名前は"きらきら"にしようと決めていた。
まだ幼い保育園児の時、保育園や先生たちが好きで、大人になったら保育士になりたい、大人になってまた帰ってきたい、と思っていた田中さん。大人になって保育士になった後、日本で認可外保育園を始めるにあたって園に特色を持たせることを考えて海外に飛び立ち、今はオーストラリアで自分の夢を形にし始めている。

「アデレードの小さいコミュニティーで、みなさんに支えられて今ここにある日々がとてもありがたく、来てよかったと感じています。この繋がりを大事に、そして少しずつ和を広げながら、みんなで支えあって生きていく、子どもたちを見守っていけるコミュニティーを作っていけたらと思います。きらきらホームはまだ小さな一歩を踏み出したばかりですが、少しずつ週末にイベントやアクティビティなどをして家族の方々にとって楽しい思い出になる場所にしていきたいとも思っています。今はレントの家ですが、いずれは自分の家でできるようにしていきたいです。そして早くファミリーデイケアの認可を取りたいです!」

キラキラした人生を周りと共有しながら、田中さんは一歩一歩、夢を叶えていく。

取材:2022年6月

きらきらホーム~育ちのおうち~
kirakirahomeforfamilies.com

絵を描くことが好きな田中さんは絵本も出版している。
「おつきさまは いつも そばにいる」
The Moon is always by your side -

三日月から満月になる月の成長と人の心の成長を重ねて描いた絵本で、みんなが満たされた人生になることに願いを込めたという。
「何冊か日本から取り寄せて時々こちらのマーケットで販売したりしています。イヤリングも手作りしていますよ!」