浜松 竜大(サッカープレーヤー / Professional Soccer Player)
チャレンジの後押しになりたい
サッカープレーヤー / Professional Soccer Player
浜松 竜大(はままつ りゅうた)
運命的な縁でアデレードを訪れてから3年。浜松さんはサッカープレーヤーとしての夢を追い続ける一方で、子ども向けのサッカー教室を主宰し、様々なバックグラウンドの子どもたちに、人生をより豊かにするきっかけを与えられたらと願っている。
サッカーの旅が始まった
浜松さんがサッカーを始めたのは小学校1年生の時。中学校からはクラブチームで本格的にサッカーに取り組み、中学校卒業後は海外でプレーすることも考えていた。しかし結局は地元のサッカー強豪校、富山第一高校に特待生として入学。チームは様々な功績を残しながら、2014年1月、旧国立競技場最後の全国高校サッカー選手権で全国制覇を果たした。その試合、浜松さんは残念ながらピッチに立つことはなかったが、苦しい3年間に学んだことは本当に多かったという。
海外でプレーしたいという夢は浜松さんの心の中にずっとあり続け、高校卒業後すぐに浜松さんは単身ドイツに渡った。しかし、サッカーチームのトライアルに参加したものの契約には至らず、一旦帰国してから今度はエージェントに薦められたシンガポールへと飛び立った。当時シンガポールのサッカーが急成長していたという。
シンガポールでは日本の大手企業がスポンサーとなるチームで1年間プレーしたが、そこで浜松さんにとって現在に繋がるターニングポイントがあった。チームとの契約条件の一つに"サッカースクールに携わる"という項目があったのだ。
「選手としてプレーしながら、子どもたちにサッカーを教えました。サッカースクールにはもちろん日本人だけではなく様々な国籍や文化、考え方の違う子どもたちがいました。子どもたちへの接し方や教え方に試行錯誤しましたが、自分にとってはとても面白くて有意義な時間でした。色々なことを学ぶことができました」。
アデレード へ
日本に帰国後、再度ドイツに渡って今度は契約にこぎつけることができたものの、半年程過ぎた時に大きな怪我に見舞われてしまい再び帰国。浜松さんは1年間の治療を余儀なくされた。
しかし浜松さんのサッカーに対する情熱は益々強くなり、オーストラリアに行って結果を出してからニュージーランドでプレーして、そこでFIFAクラブワールドカップに出場する、という具体的なプランを描いた。FIFAクラブワールドカップに出場することは浜松さんが小学生の頃からの夢だった。
これまではエージェントに頼る部分もあったが、オーストラリア行きは自分ですべて準備を行い、シドニーのサッカーチームとの面談設定、ビザ申請など浜松さんは一人で行った。そして、これが浜松さんとアデレードの運命的な出会いに繋がることとなる。
「オーストラリアのイミグレーションからビザ認可と健康診断リクエストのメールが2つ別々に送られてきたのですが、ビザ認可のメールだけを見ていたんです。出発日になって羽田空港に行ったのですが、チェックインの際に健康診断が完了していないためビザが正式に有効になっていないことが分かり、その日は渡航できませんでした。第三国に半年以上居住していた場合は、健康診断の結果を提出しなければいけなかったようです」。
すぐに健康診断を受けて1週間後には渡航したいと思っていた浜松さんだが、次の日たまたま先輩に誘われて東京でサッカーの試合に出場。浜松さんはその試合で良い結果を出したこともありその先輩から「アデレードのチームを紹介してあげるよ」と言われた。その先輩は前年までアデレードでプレーしていたという。
「アデレードのことは知りませんでしたが、色々調べてみると故郷の富山にも似たような感じで『ここだ!』と思いました。自分の性格上、あまり人に知られていなかったり、人気がないところが好きなんです」。
1週間後、浜松さんはアデレードに降り立っていた。
夢に向かって
それから3年。浜松さんは現在Fulham United Football Clubに所属し、ステートリーグ1で活躍を続けている。
「将来的にはニュージーランドのオークランドシティでプレーしてFIFAクラブワールドカップに出たいと思っていますが、レベルの高いオーストラリアでサッカーのスキルを磨きながら、人間性も高めていきたいです」。
無名な選手たちが必死で頑張り、夢を叶えている姿が印象的なFIFAクラブワールドカップ。浜松さんはいつか自分もその舞台に立つために走り続けている。
一方で、浜松さんにはもう一つの希望がある。子どもたちと関わることだ。
「自分はサッカーが得意なので、子どもたちにはサッカーを教えることが自然ですが、僕は子どもたちにサッカーを通じて、何でも良いので人生をより豊かにする何かのきっかけを与えられたらいいなと思っています。みんながサッカー選手を目指すわけではないし、他のスポーツも好きな子どももいれば、勉強を頑張りたい子どももいますので」。
最初は1人、2人と少しずつ始まった サッカースクール"Turtlass(タートラス)"は今では生徒数が60人ほどになるまでに成長した。チーム名の由来は、童話"ウサギとカメ"にちなんでいる。「遅くてもカメは最後に勝ちます」と浜松さんは嬉しそうに話す。
生徒のバックグランドは、日本、オーストラリア、韓国、中国、スペイン、インドなど様々で、スクールは週5回開講している。
スタッフも今は5-6人になり、浜松さんをサポートしてくれている。
「コーチとして一緒に参加してくれるスタッフもそれぞれ考え方が違うので、その違いを知るのも子どもたちにはメリットだと思います。みんな自分の活動もあって忙しい中協力してくれていてとても感謝しています。スタッフのみんなにとってもサッカースクールに携わることがプラスになってくれれば嬉しいです」。
浜松さんはタートラスをもっと成長させ、将来はスクールという枠を超えて、アンダー6からトップチームまでを持つクラブチームに育てられたらという構想も思い描いている。
サッカーに感謝し、サッカーに生きる浜松さんには生き方に対するシンプルなビジョンがある。
「自分の姿を見て『あいつでもできるなら自分もできる』と思ってもらえると嬉しいです。人がチャレンジしていくきっかけを与えられる、そんな生き様をしていきたいです」。
熱い気持ちと前向きな心で、浜松さんのチャレンジはこれからも続いていく。
タートラスホームページ
https://www.turtlass.site
LINE official account 「@251kgszp」
※ https://lin.ee/1TRQ89xK2
取材:2020年11月