こころのはなし

どんなセルフトークをしてますか?

仁科純⼦ (Junko Nishina)
東京都三鷹市出⾝。関東でのカウンセラー職を経て、2008年にアデレードに移住。フリンダース⼤学院でソーシャルワーク(社会福祉⼠)修⼠号を取得する。 NPOで10年にわたり、⼦育て⽀援やメンタルヘルス、DV問題などを担当。豪州社会福祉⼠協会よりメンタルヘルスソーシャルワーカーの認定を受け、 メディケアが利⽤できる HIKARI Counsellingを2024年に開業。安⼼して話せる場づくりを⼼がけています。
[ hikarico.com.au ]

うれしいとき、悲しいとき、物事がうまくいったとき、思い通りにいかなかったとき。わたしたちは日常生活のなかで、いろんなことを感じたり考えたりします。
そのなかで、皆さんはどんな言葉を自分自身につぶやいたり語りかけたりしていますか? 今回は、そんなセルフトーク(内なる声)がテーマです。

自動思考とは?

事あるごとに自分について浮かんでくる言葉を思い浮かべてみてください。場面ごとに経験していることは違っても、自分について、よく同じようなフレーズや言い回しが浮かんできませんか? これがいわゆる「自動思考」です。
たいてい、この自動思考からくる言葉は「自分は何をやってもダメだ」とか「人と比べて劣っている」など、自分を厳しく批判したり責めたりするキツイ一言になりがち。
そして、こう言った自己批判や自責感は、ことあるごとにやってきてわたしたちを苦しめます。人から言われるのなら、その人を避けたりもできますが、発生源が自分となると逃げ場がないのも困ったところです。

脳のメカニズム〜生存本能

なぜこんなことになるのかというと、わたしたちの脳がネガティブなことに反応しやすい思考マシーンだからです。
進化の過程で、生き延びるためにすばやく危険を感知したり避けたりすることが生き残ることにつながってきましたし、危険な情報を優先的に記憶することで身の安全を守ることもできます。つまり、ネガティブな思考に陥りがちになる傾向は、生存本能としてわたしたちの脳に組み込まれてきたものなのです。
これまで役に立ってきたものではありますが、ネガティブなセルフトークの繰り返しがわたしたちの心身にダメージを与えたり力を奪ってしまったりする悪影響も無視できません。

考えと事実を区別する

そこでまず大切なのが、自分の自動思考からくるセルフトークに気づくということです。浮かんでくることを紙に書き出してみるのもいいでしょう。
そして役に立つのが「自然に浮かんでくる言葉」と「事実」を分けるという工夫です。心にふっと浮かんでくる否定的な言葉を、「これはただの考えにすぎない」ととらえ直し、事実と区別するのです。
自動思考によるセルフトークは、もしかしたら過去に誰かに言われた言葉からきているかもしれません。でも今の状況は、そのときとは状況も要因も異なります。また、まだ物事がよくわからなかった子どもの頃に受け取ったメッセージが自己評価や思い込みにつながっている場合もあるでしょう。
セルフトークが本当に正しいのか、そうでないのかを検証するためには、事実との矛盾がないかどうかをチェックしてみるのが有効です。「いつも失敗ばかりしてしまう」と思っていても、実際には、うまくできたことや小さな成功体験がありませんでしたか?実際にほかの人から褒められたり、肯定的なコメントをもらったことなども事実として挙げられます。

視点を変える

第三者の視点に立ってみるのも一案です。自分のことをよくわかってくれている人を思い浮かべて「あの人だったら、この状況で自分になんて言ってくれるだろう」と考えてみると、客観的な見方をするのに役立ちます。
また、自分が失敗してしまったことなどに対して、もしそれが他人の失敗だったら、自分はその人にどんな言葉をかけるかを想像してみるのもいいでしょう。

セルフトークの自己点検を

ふだん意識的に、または無意識的に自分にかけている言葉は、繰り返し浴びるシャワーのようなものなので、その影響力はあなどれません。
セルフトークが不当に厳しすぎたり、否定的になっていないか。自分に対してフェアで親切な言葉を自分にかけてあげているか。

ときおり立ち止まって、自己点検してみることをおすすめします。