gogo map gogo map
Interview

ここまでがエーブルネットの社長としてのお話だったのですが、ここから山口社長のパーソナルな部分を聞かせてください。
今年1月17日「自分がいなくてもまわるチームを作ろう」という本を日本で出版されましたが、どの様な本でしょうか?

この本は、実際私の体験から出ている本なのですが、私は今までに東京の事務所、カナダのバンクーバーの事務所、ニュージーランドのオークランドの事務所、それからパースにも事務所があったんですね。
そうすると、シドニーの拠点には半分いるかいないかだったのですよ。
出張ばかりしていましたから。
そうすると小さいうちは、一人でなんとか回していけましたけど、だんだん大きくなってくる。
それと場所が、すごい距離があるじゃないですか。それを何回も行っていたら、本当に会社に私がいなくてもまわる様な組み立てを作らないと実はうまくいかない。

というか実は随分失敗したんですよ。正直言うと・・・。
カナダでは、幹部社員が会社のお金の使いこみがあったり、大変な思いをして・・・。
結局「自分がそこにいないから管理出来なかった。」というのでは駄目だから、じゃあ「いなくてもどうやったら管理出来るようするんだ。」というと、そこに自分がいなくてもまわるシステムをうまく作ればいい。

具体的に何かというと、カナダのバンクーバーではお金の出入りがどの位で、人の出勤率、何をやったか、いつまで何をどうするのか、そういったことがきちんとシドニーにいる私にもわかるし、相談事についても毎日出来るようなシステムを作って、答えがいつまでに、どう返ってくるかという形を作っていく。
そういうものが、高い授業料を払って少しずつ自分にも身に付いてきた、という個人的な体験と。


もうひとつは、「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社) と言う、アメリカで非常に多くの経営者の賞を取っている イヴォン・シュイナード さんが書かれた本を読んだのです。
英語で言うと 「Management By Absence(不在による経営)」という本。

ある意味 「社員もハッピー、経営者もハッピー」 その為には何が必要かというと、まず コーポレート・カルチャー。
社長であるシュイナードさんは半年位急に会社にいなくなって、山登りに行っちゃう。
社員はスキーが大好きで、冬になると何処かにスキーに出かけて2、3ヶ月帰って来ない。
そういう事をお互いに認めようという、彼の非常に強力なリーダーシップで、「うちはこういう会社だ、だからこういうコーポレート・カルチャーが好きで、そしてそれをやって行きたい人は来て下さい。」 と言ったらいっぱい来たわけですよ。

だから彼のアメリカの本社は、すごく良いサーフィンの波が来る所にあるんですよ。サーファーがいっぱい来て。
風の状況でいい波が来ると分かると 「私、今日昼からいないからね。」 って。
だけどそこで 「じゃあ行っておいでよね。」 って言ってくれる周りの社員と、いなくても仕事がまわらないと困るから、ジョブ・シェアリング。
彼がいない時には、インターネットから彼の予定表をチェックし、今日誰と会う、何の話をする、結論はどうなる、と言うことが、全部代わりの人間が引き継げる形を IT とコストをかけてシステムを作っていく。
そうすると会社がまわる。これって素晴らしいと思ったのです。

私だってもしサーファーだったら、いい波が今日来るんだったら行きたい。だけど今だったら出来ない。
なぜかっていうと、そういうことを「良し」とする会社の考え方がないじゃないですか。
特に日本の会社は絶対駄目ですよね。と言うか、休みも取れない。波がいいからなんてもっての他。

だけどそれを認めて行くことによって、会社にいる時には一生懸命やるし、誰かの仕事のテイクオーバーを自分もします。これって素晴らしい会社だなと私は思った。自分としてはそういう風な考え方を持った会社に、これからしたいと思うし、これからはそういう会社が間違いなく伸びるのかなと。

大事なことは仕事をおろそかになってはいけない、生産性が落ちてはいけない。
だけど、落ちない為にはどうしたらいいのかというシステムを作るということで、まずマニュアルを作りましょう。
それから共有の色々な情報の公開をしましょう。スケジューリングも全部決めましょう。みんなが見られるようにしましょう。そういったインフラもちゃんと整えて、考え方も確立して、そしてそれをやって行くことによって会社の労働生産性も上げて行きましょう。これって一番良いんですね。

おそらく極端に言えば、100年後200年後のビジネス社会は、そうなっていると思うんですね。
通信がすごく進化していくから。

だけど、我々が今持っている技術の中でやれることをやっても実現できるのではないか。
実際 「パダゴニア」 って言う会社は、社員2000人くらいと十分大きい会社だけど成功している。
であれば、うまくやっていけば我々だってやっていけるし、他の会社もうまくできる。
そうして会社も社員もハッピーな会社にこれからしていければな、ということであの本を書いたのです。

 

オーストアリアで働き生活している人達は、日本と比べそのライフスタイルに近い部分があると思うのですが、そういうオーストラリアの生活スタイルからも影響を受けられたのですか?

 

やはり日本とオーストラリアでは基本的な仕事の考え方に違いがあるんです。

日本だと仕事は 「辛くて厳しいものだ」 そして 「会社のために」 という考え方がベースにある。
だけどオーストラリアってご承知のように、仕事っていうのは自分のためのものなんですよ。
自分の生活を支えるための糧としての仕事。出来ればその仕事を自分も楽しみたい。
仕事のために何か犠牲になるっていうのはしたくない。

自分がサーフィン大好きだったら、いい波が来たら 「行きたいよね、行ってもいいじゃん、それで仕事に支障がなければいいでしょ?」 っていう土壌があるじゃないですか。
そういうのをいっぱい見てきたし、それはそれで認めてあげるべきで、それに合うようなシステムさえ出来ればそれは良いわけだから・・・ というのはやっぱりありましたね。
やっぱりここで23年仕事していますから、もう何かそうなっちゃうのかな。

日本にもそういうのが根付いたら本当に変わりますよね。

そうですね、でも少しずつ変わってきているんですよ。

(先ほどの) パダゴニア・ジャパンは本社が鎌倉にあるのですが、社員で30分かけてカヌーで会社に通っている人がいるのです。ちゃんと会社にはボートを置く場所があって、シャワーを浴びる場所もあるのです。
そういう人達を受け入れてあげる。

自由な発想の会社ですね。

「やる時はやれば良いじゃないか。」 「会社にカヌーで来たって良いじゃない。」
ちょっと前なら 「何それ」 とか、 「前例がない」 とか非常に保守的な考え方で受け入れられなかったものが、
徐々に徐々に受け入れられている。
それって素晴らしいことだと思うし、だから日本も少しずつ変わってきている。

もうひとつ大きいのは、在宅勤務。
これは今日本で政府も後押ししているんですよ。
どういうことかっていうと、仮に会社で100人の人が働いている。その中の10人が在宅勤務すると、電車が10%混まなくなる。道だって10%混まなくなる。そういうことによって、今過度に集中している大都市の交通問題、或いは住宅問題が良くなる。
在宅勤務するなら、別に東京や大阪に住まなくても良いわけですから。

山口社長著のビザガイド

もうひとつは、日本が高齢化してきて40・50代の方達のご両親が70・80代、そうすると介護の問題がある。
介護ってやっぱり人間の情として見れば、できれば自分が介護してあげたい。
だけど、会社に1時間半かけて通っているとなかなかそうも行かない。
だけどそれが田舎で在宅勤務が認められるなら、東京での平均往復通勤時間の3時間を介護や仕事、いろんな形で費やせるんです。
そういったことを安部首相のときに提唱されて、在宅勤務を推進しましょうということになってきました。
それは政府が後押ししているし、大手企業もいろんな形で試行錯誤していますけど、大筋としては在宅勤務を増やして行きましょう。

在宅勤務ってことは、その人が会社にいなくてまわるシステムですよね。
ある意味 「不在のマネージメント」 なんですよ。
今世界中でそういう人達がどんどん増えている。
特にIT系、あとメディア系、出版系とか。どんどんそれが広がってきている。