

寿(ことぶき)を司(つかさど)る「寿司」。めでたい新年の祝宴にはお寿司とお酒がないと始まらない、という人も多いかもしれない。日本の食文化のまさに王道である寿司。オーストラリアでも大人気の寿司を楽しみながら、“市民大使”としてさらなる日本の寿司文化普及に務めてみよう!
世界で通じる日本語の一つである「SUSHI」。酢飯と魚介類などを合わせた日本の国民食ともいえるものだが、「寿司」と一言でいっても、握ったり、巻いたり、詰めたり、押したりと、その食べ方には様々な種類がある。日本で「寿司」といえば、一般的に「握り寿司」のことをさすが、ここアデレードで「SUSHI」といえば、「巻き寿司」がイメージされている!?
寿司の語源は、酢をまぜた飯=「酢飯(すめし)」の「め」がいつの間にか無くなったものといわれているが、その原型は紀元前4世紀頃の東南アジアで誕生した「なれずし」(米の中に内臓を処理した魚を塩漬けにして入れてそれを発酵させた保存食)といわれている。 「なれずし」が中国を渡って日本に入ってきたのは8世紀頃。そして室町時代後期(15~16世紀)には保存性よりも料理自体が重視されるようになって米も一緒に食べるようになった。
現代の握り寿司のスタイルが広まったのは江戸時代。“江戸の前”の海である東京湾で獲れた魚介と海苔を使うことから「江戸前寿司」と言われ、その名は今でも握り寿司の代名詞となっている。
戦後の日本では寿司屋といえば高級料理屋に分類されていたが、1958年には大阪で最初の回転寿司がオープンするなど、次第に大衆的な寿司屋が人気を集め、現在では寿司は家族で楽しむ庶民的な食べ物となっている。
【握り寿司】
握った酢飯の上に新鮮な魚介類や玉子焼きなどの「ネタ」を乗せ、一口で食べられる大きさに握った寿司。つける醤油には様々な種類があり地域によっても異なるが、一般的には刺身の旨さを引き出す溜(たまり)醤油がよく使われる。醤油を「シャリ」と呼ばれる酢飯側につけるかネタ側につけるかについては正式なマナーはないが、ネタにつけた方がシャリが崩れず、酢飯の味も損なわれないため、ネタにつける人も多い。(どちらにしても、素材本来の味を楽しむためには醤油のつけ過ぎにはご注意)
【巻き寿司】
アデレードでも国籍を問わず手軽でヘルシーな食事として大人気なのが「巻き寿司」。「海苔巻き」とも言われ、海苔の上に酢飯を乗せ、その上に魚や野菜を乗せて「巻きす」で巻いた寿司のこと。一口サイズに切って食べても、長い棒状のままかぶりついて食べてもOK。家庭で作る場合は、自分で好みの具を巻いて楽しむ「手巻き寿司」がオススメ。サーモン、マグロ、エビ、玉子、野菜スティック、照り焼きチキン……。パーティや家族団欒の食卓に最適だ。
【ちらし寿司】
お祝い事などの際の手作り料理として食べられることが多い寿司。大きく分けて2種類あり、酢飯の上に握り寿司同様のネタを乗せたものと、酢飯の上に細かく切った魚介や野菜などを混ぜたものがある。
【いなり寿司】
甘辛く煮付けた油揚げに酢飯を詰めた、お弁当に人気の寿司。愛知県の豊川稲荷の門前町が発祥の地とされているが、稲荷神の使いとされる狐の好物が油揚げだったことからその名前が付けられている。
【押し寿司】
酢飯と具を専用の木製の器の中で重ねて一定時間、力をかけて押したもの。具材は鯖や鱒など地方ごとに特色がある。西日本で盛んで、その土地ごとの名物弁当としても人気がある。
寿司の主役といえばもちろん「ネタ」だが、同様に大切なのは「シャリ」と呼ばれる酢飯。シャリの語源は仏教用語でお釈迦さまの骨のことを「舎利」と呼ぶことに由来する。仏教では骨は土にかえると、巡り巡って稲や麦などの穀物になり人々の助けとなると説く。つまり米は舎利の化身であり、非常に尊いものと考えられていた。ちなみに寿司屋のシャリに使われる米にはブレンドを工夫したものなどもあるが、一般の家庭では普通の短粒米で十分おいしくいただける。また、肝心な寿司用の酢は一般の穀物酢に砂糖と塩を混ぜて作るか、すでにそれらが配合された手軽な寿司酢を使うとよい。
寿司は鮮度が命。新鮮な魚介という条件はもちろんだが、生で魚を楽しむ知恵として「わさび」は欠かせない材料のひとつ。生臭さを消したり、味を引き締めるだけでなく、殺菌効果もある。また「ガリ」と呼ばれるしょうがは、口の中をさっぱりさせるだけでなく、殺菌効果にも優れている。 口の中をさっぱりさせるといえばガリだけでなく、「アガリ」と呼ばれる熱いお茶も大貢献。アガリは元々食事の最後(あがり)に飲むものだったが、食事の途中でもOK。熱いお茶が口の中に残った魚の脂分を落としてくれるので、次に食べる寿司をさらにおいしくいただくことができる。
一人前の寿司職人になるには「飯炊き三年握り八年」と言われ、10年を超える長い修行が必要とされている。そのため、ベテランの職人が腕を振るう寿司の味や見た目の美しさは、まさに芸術作品。例えば職人が作ったシャリは手にしても崩れず、口に入れて初めてとほろりと馴染む絶妙な加減に仕上がっている。
寿司職人の手には秘密がある。寿司を握るときに米粒がつかないようにするためと殺菌のために酢を使うのだ。「『パンッ』。へい、今日はなんにしやしょう?」と職人の小気味の良い合いの手と威勢のいい掛け声が聞こえるとき、実はこの合いの手と思われる「パンッ」と手を叩く音は、手に酢をつけてそれを払う音。手に酢をつけることで手の温度を下げ、ネタとシャリ本来の味を守っているのだ。また、ネタを最大限活かすのは職人の包丁さばき。同じ魚の身でも、切り方ひとつで味が変わってしまうほど繊細なものだという。最高のシャリ作り、酢を絶妙に使った握り方、そして熟練した包丁さばき、こうしたひとつひとつの職人技が日本の寿司文化の秘密を握っている。
【恵方巻き】
2月3日の節分の日にその年の恵方(幸運な方位)を向いて食べると縁起が良いといわれる太巻き(太い巻き寿司)。食べるときは目を閉じて黙ったまま、願い事を思い浮かべながら丸かぶりするのがポイント。元々大阪を中心とした風習だったが、最近では日本全国で親しまれるようになっている。ちなみに2012年の恵方は北北西。
スシ食いねェ!
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